『ヤンドク!』唯一の勝ち筋

フジテレビの新ドラマ(月9)、『ヤンドク!』が始まった。「橋本環奈×根本ノンジ」の『おむすび』タッグふたたび!とのこと。ヤンキーだった主人公(橋本)が親友の死をきっかけに猛勉強し脳神経外科医になり、医療現場に新しい風をもたらす痛快医療エンターテインメント、だそうな。

事前の情報からひどさは何となく予想できたけど、やっぱりひどい。橋本環奈の演技下手は今作でも相変わらず。「憂い」「沈み」などの感情を全部「眉をひそめる」で表現しちゃうから、「いつも不機嫌なヤツ」に見えてしまっていた『おむすび』ヒロインのときから何ひとつ進歩していない。

とはいえ、このタッグの戦犯は脚本の根本ノンジのほうだろう。漫画原作のドラマ化を多く手掛けるヒットメーカーということになっているけど、オリジナルで話を作るとなると能力不足がモロに出てしまった感じ。『ヤンドク!』はまだ一話しか放送されていないからあれだけど、『おむすび』ではキャラクターの性格に一貫性がなく「え、お前そんなやつだった?」のオンパレード。登場人物が生きているように思えず、話を都合よく進める小道具にしか見えなかった。何より、全体を通して何が言いたいのか全然わからない。

思うに根本氏は作家性が薄いというか、たぶん書きたいことなんて何もないのだろう。だから自分で一から話を作るとなると、どこか(とくに漫画)で見かけたエピソードをツギハギしてそれっぽくしたり、濃いキャラ(ヤンキーとかギャルとか過剰な方言)を出してドタバタさせて時間を埋めるしかない。そりゃ全体を通して何も読み取れるわけがない。

でも、根本氏の作家性の薄さはたぶん脚色家としては強みなんだろう。いっさい自我を出さず、ヒット漫画を忠実にドラマに落とし込む職人としては腕がいいんだと思う。「セクシー田中さん」事件の脚本家の相沢友子みたいに、要らん自我を出して改変する人よりはずっと優秀だ。まあ、相沢氏は元女優でシンガーソングライターだったらしいので、どうにも「私を見て」が抜けなかったのかもしれないが。

主演の橋本環奈にしても、演技はひどいけどお顔はさすがに1000年に一人の逸材だ。美しいし力があるから、目をひん剝いたりの顔芸はインパクト十分。気取らず思いっきり変顔もできる。あまり好きではないけど、いわゆる「福田組」的な作品(銀魂とか)でギャグをやる分には結構優秀な要員だと思う。

このタッグで成功するとしたら思いっきりおバカに振り切ったコメディしかない。一話放送で決めつけて悪いけど、この二人にまともなドラマをやらせようとした時点で負けは決まっていた。一つだけ逆転の勝ち筋があるとしたら、櫻井翔の『占拠シリーズ』のように、「トンチキな部分にツッコミを入れながら楽しむ」ほうに転がることだが、それも難しそう。『おむすび』は突っ込んでも面白くなかったものなあ。二人ともなんで受けたんだこの仕事。